カテゴリ:アトリエ訪問( 2 )

アトリエ訪問 三橋頼子 MITSUHASHI Yoriko

都内にある三橋頼子さんのスタジオを訪ねました。

三橋さんはイギリスで10年ほどジュエリーを学び、制作をされていましたので、工房やアトリエではなくスタジオと言われます。イントネーションや語尾で出身地方がわかるのと同じで、お話ししていると呼び方や単語で学んで来た背景が分かることもありますね。
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スタジオのガラス戸を開くと正面にあるのがジュエリーの作業机。
机の上はきれいに整頓されており、整理に使う小物に、さりげなく味のあるアンティークの品々を使っているのが三橋さんらしいです。
例えば、銀ロウを入れているのは、イギリスで手に入れたアンティークのガラス瓶(下の画像)。その昔、王侯貴族が旅にでるときに、この瓶の中にブラシやお帽子を留めるピンなどをいれて、それを革の鞄にいれて持ち歩いたとか。
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また、下の画像でブラシの入っているビーカー。これは日本の骨董市で見つけられたそうですが、メモリのところに、「メヤス」とかかれています。その字体やメヤスという言葉からも、「まあ、こんなところでしょう」といった風な、せせこましくない、ゆったりとした時代のようなものが感じられます。和みますね。
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ジュエリーの作家さんの作業空間におかれているものは、多少の違いはあれ、だいたい同じような道具が揃っていますが、作るものだけでなく、こういった整理の仕方や空間の作り方に作家さんの姿勢、趣味や個性が表れます。

こちらの黒いものは炭。ロウ付けは、この炭の上で行います。
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こちらは金属の線を細く均一に伸ばす道具。左上の穴に試しにシルバーの線をを通してもらいました。これをしごくようにひっぱると、メモリの数字の太さに線が整うそうです。様々な道具があるものです!
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他にも丸管の作り方など、道具や制作途中の物を示しながら教えていただきました。百聞は一見にしかずで、水が乾いた土に染み渡るように一瞬で理解できます。

ここで三橋さんのシルバーをいぶして黒くさせたシリーズから、ピアスを2点ご紹介します。
全て手作業で作られたもので、一点一点がひとつの作品です。 下の作品は3つの輪で構成されており、実際に耳に着けると耳と一体化して単体でみるよりぐっと魅力が増します。
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下の画像の作品は、2階層になっており、写真の左側のピアスのように上の四角が下の四角に重なるようになっています。ピアスを身に着けたときには、右側のピアスのように2階建てになります。着けている時も、下の四角をちょっと上に押してやるとすっと上に重なります。このピアスの動きを見た人はたいてい、お!と少し目を大きくして一瞬子供のような表情になります。
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「コンテンポラリージュエリー展 ―見えるもの見えないこと―」で2008年に三橋さんをご紹介させていただいてから4年。日本でも世界でも様々な出来事があり、私達は年齢も経験も重ねて物に対する感じ方や考え方も多かれ少なかれ変わっています。
同時代を生きる作家の作品というのは、その時代の空気を吸って作り出されていく物ですから、やはり世相を反映させたり、作家の見方が表れます。
かたちや色に変化が表れるかもしれないし、たとえ一見同じような色かたちに見えても、作り込まれて深みが増すこともあります。それは、0.1mmの厚みや長さの違い、面の磨き具合であるかもしれません。しかし纏うオーラがかわるのです。
一人の作家さんの作品を見続け、変化の兆しをみとめ、変貌をながめるのもコンテンポラリー作品の面白みの一つといえるでしょう。
一人でも多くの人に三橋さんのジュエリーの変化を追いかけていただければと思います。


三橋頼子 MITSUHASHI Yoriko

2006 ロイヤルカレッジ オブ アート ジュエリーコース 大学院 卒業
2002 エディンバラカレッジ オブ アート ジュエリーコース 卒業

繊細さや優雅さをもち、素材の質がひきだされているジュエリー を追求している。身に着ける人の内面を知る糸口となり、また ジュエリー自体も着ける人により、隠れた一面をみせることを理想とし、現在は東京を拠点に活動。在学中より受賞多数、国 内外の展覧会やアートフェアへ作品を出品。
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by bijou-m | 2012-04-06 19:52 | アトリエ訪問

アトリエ訪問 墨屋夕貴 SUMIYA Yuki

墨屋夕貴 SUMIYA Yuki

雪もちらつく2月のとても寒い日に、鎌倉から江の電に乗って墨屋夕貴さんのアトリエを訪ねました。

駅からは徒歩で10分もかからない程ですが、途中、こんな趣のある階段を登ります。
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登りつつ振り返ると、こんな風に海が見えます。
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ビルの間で生活している身からは、なんともうらやましい眺めで、いや、ほんとうに感激。
この日は、海も空も灰色がかった暗い色で、肌に感じる寒さだけでなく、目からも冷気が体内に入ってきました。自然の色、揺れる小枝のざわめきで刻々と変わる天気の様子を確かめられるような暮らしは、発想や物づくりに、直接的にも間接的にも随分と影響していることでしょう。
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こちらは、墨屋さんの作品が置かれているガラス棚です。これまでの作品から新作まで。部屋の雰囲気や優しい光の加減もあって、この一角はモランディの静物画のようでした。本当はここで新作も大きくご紹介したいところですが、それはまたの機会に。
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アトリエ内には、機械や道具がきちんと整理されて置かれています。墨屋さんは、かつてハイジュエリーの制作を担当していた事もあり、その当時の物もあるので道具が充実しています。

下の写真の鍋は、金属を洗うときに使うのだそうです。以前、鋳金作家の工房へ伺ったときも、あやしげな液体の入った壷が並んでいました。金属を扱う作家の工房というのはたいてい魔女の住処みたいです。
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下の画像は、酉福でも以前からご紹介している、「white artefact」。
円柱や角柱、楕円や扁球などの立体が組合わされてひとつの造形物となっている一連のシリーズです。
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「white artefact 03」ブローチ 素材:シルバー925、ロジウムコーティング

余計な装飾をそぎ落としながら、人の手の形跡をのこしています。機械で作られた正確な寸法の物質が持つ冷たさがなく、かといって、甘さが残るような手作り感もない。3方向の空間の広がりが感じられる立体的な作品です。

墨屋さんの作品作りは、まずコンセプトがあり、その表現として、かたちがあります。どのように作品作りをされているか聞いてみました。

***

私は感動を受けたものやおもしろいと感じたもの、大切なものや希望などをジュエリーで表現しようと試みています。
私がそれらを感受する瞬間は、二元性(2つの異なる物事の関係)が見えたときです。例えば、日常と非日常、存在と消滅、永続と儚さ、内側と外側、不変と流動…
そこには、普遍と変容していく要素があり、それは又私たち人間誰もが持っている、生きていくために必要なものだと思うからです。日常の中にあるそんな一瞬にとても興味をそそられます。

また二元性を通して見えてくる、記憶・時間・空間というテーマには特に関心があり、さらに探求していきたいと考えています。
私にとっての大切なプロセスとは形を生み出すことです。自分の感覚に素直につくることで、その過程を楽しんでいます。

ジュエリーは、見て、触れて、身に着けて感じることができる存在であり、また私たちの日常の中に変化をもたらしてくれるものの一つだと思います。
ジュエリーがあなたとあなたの周りの人達の間に小さな対話を生み出してくれることを願っています。

墨屋夕貴 SUMIYA Yuki

1991-1993  女子美術大学短期大学 造形学部 生活デザイン科金属工芸専攻卒業
1996     星文子氏に師事
1997-2000  ジュエリースタジオインフィニティ― 
   ジュエリースクールベーシッククラス非常勤講師(東京)
2000-2004  株式会社ジュエリースタジオインフィニティー 制作担当
2005-2007  ALCHIMIA Contemporary Jewellery School卒業(イタリア)
その後、同校にて、Alessandra Pizzini氏や、Manfred Bischoff氏に師事。また、
Iris Eichenberg、Peter Skubic両氏によるショートワークショップを受講するなど、研鑽を積む。現在は、ORIZZONTI(www.orizzontiarts.com/) のメンバーでもあり、 制作発表をしながら、コンテンポラリージュエリーを紹介するレクチャーやイベントを企画している。
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by bijou-m | 2012-02-23 15:03 | アトリエ訪問

   


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